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ハンバート ハンバート( HUMBERT HUMBERT )



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ハンバート ハンバート( HUMBERT HUMBERT )

ブラザー軒

作詞:菅原克己
作曲:高田渡

東一番丁、
ブラザー軒。
硝子簾がキラキラ波うち、
あたりいちめん氷を噛む音。

死んだおやじが入って来る。
死んだ妹をつれて
氷水喰べに、
ぼくのわきへ。

色あせたメリンスの着物。
おできいっぱいつけた妹。
ミルクセーキの音に、
びっくりしながら

細い脛だして
椅子にずり上がる。

外は濃藍色のたなばたの夜。
肥ったおやじは
小さい妹をながめ、
満足気に氷を噛み、
ひげを拭く。

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妹は匙ですくう
白い氷のかけら。
ぼくも噛む。
白い氷のかけら。

ふたりには声がない。
ふたりにはぼくが見えない。
おやじはひげを拭く。
妹は氷をこぼす。

簾はキラキラ、
風鈴の音、
あたりいちめん氷を噛む音。

死者ふたり
つれだって帰る、
ぼくの前を。
小さい妹がさきに立ち、
おやじはゆったりと。

東一番丁、
ブラザー軒。
たなばたの夜
キラキラ波うつ
硝子簾の向うの闇に。